日本展示学会通信51号(2)

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■国立科学博物館から府中市美術館まで、東京都内の博物館など44館に割安で入場できる「ぐるっとパス2004」
(長澤信夫)

「東京ミュージアムぐるっとパス2004」という割引チケットが、4月1日から使用できるようになった。これは、東京都内の国公私立の博物館や美術館、動物園、水族館など44館が参加しているもので、財団法人東京都歴史文化財団内に実行委員会の事務局がおかれている。この事業は、2003年度に「江戸開府400年」を記念した事業として始まり、各方面から好評を得ることができ、今年度も継続されることとなった。参加館は、33館から44館へと増えている。
チケットは、参加44館分がつづられたもので2000円。何度でも同じ館に入館できるフリーパスではなく、それぞれの館に入場可能なチケットが1枚づつ集められている。有効期限は、最初に入場してから2か月間。ゴールデンウィークや夏休みなどに利用するのが「お得」のようだ。施設によっては、特別展の開催中にはパスが使えない場合もあるので、インターネットでチェックを入れておくとよいと思われる。

東京都歴史文化財団
http://www.rekibun.or.jp/index.html
ぐるっとパス2004
http://www.rekibun.or.jp/grutto/

■地域活性策!廃校をNPO法人の活動場所に(東京都港区)
(国定由実)

1998年3月、民法の特別法として特定非営利活動促進法いわゆるNPO法が成立した。公益法人制度そのものの抜本的な改革は、NPO等が、政府や民間営利企業に対抗しうる第三勢力になるために不可欠であると考えられているからである。第一セクターが国や地方公共団体、第二セクターが民間事業者、第三セクターが国あるいは地方公共団体と民間事業者との共同出資で設立された法人、そして第四セクターとしてNPO法人が位置づけられ、保険・医療・福祉、社会教育・まちづくり、文化・芸術・スポーツ、環境、災害援助、国際協力など、様々な団体が法人格を持って活動を行っている。
一方で地域再生策としての位置づけのもと、廃校となった東京の六本木・俳優座裏の旧三河台中学校がNPO団体の活動拠点として解放され、現在31団体が同居している。行政は多様な社会問題の解決に向けて自主的に活動するNPO等を公益的な課題を共に担うパートナーと捉え、将来の行政と団体との協働のありかたを探る場として本施設を位置づけている。主な機能として 1.NPO等の育成・支援 2.市民活動の拠点の形成 3.行政とNPO等とのネットワークの形成 が掲げられている。
また、様々な団体が同居することで新たなネットワークの幅が広がっていることも、今後のNPOの発展において興味深いテストケースである。

■「公の施設」の管理代行を促進する「指定管理者制度」が本格稼動!
(高橋信裕)

地方自治法の改正(平成15年6月6日成立、同月13日公布)が実現し、その改正法の施行が同年9月2日より行われ、新年度を迎えて、いよいよこの制度の運用が本格化の兆しを見せ始めている。これまで「公の施設」の管理を外部に委託する場合、地方自治法の規制から財団等の公共的団体に限定せざるを得なかった。このため、自治体財源で設立した財団が、各地方の「公の施設」の管理、運営の受け皿(委託先)となり、第2のお役所的な存在になっていた。そこに日本経済の長引く不況と税収の落ち込みから、肥大化した「公財政」の見直しと改革が緊急の課題となっていた。お役所仕事の延長では、施設運営は効率化が望めないと言うわけで、法改正によって民間事業者(法人その他の団体)が管理代行を行うことができるようになったのである。
「公の施設」には、博物館や美術館、記念館などの【文化施設】も入っており、博物館等の展示設計や施工に携わってきた民間の事業者も、こうした分野での参入を視野に入れた、新市場に対応出来る体制づくりが求められている。

■ 愛知万博開幕まで、あと1年。目玉展示に7〜8000年前のマンモスの冷凍展示
(高橋信裕)

2005年3月から始まる愛知万博(愛称=愛・地球博)まで、1年になった。会場の名古屋東部丘陵ではパビリオンの建設が進められ、姿を現しつつある。「開発型」から「地球環境重視型」へと軸足を移した今回の万博は、21世紀の万博のあり方を先導する試金石にもなっている。その万博の目玉展示物の一つに「マンモスの冷凍展示」があり、関係者の濱田隆士・福井県立恐竜博物館館長の話によると、シベリアの永久凍土に眠ったままにある成体を完全なままで、そっくり冷凍して展示しようとする試みで、すでにロシア連邦サハ共和国の凍土から発見されたマンモス(成体)の頭部と左の前足が確認されている。今後、同地点において万博協会の調査チームが現地調査を行い、他の部位の発見に努め完全な形での再現を目指しているが、発見できない可能性も見越して、別働隊が北海道原野にマンモスの成体を求めて調査を行っているそうである。もし、これが実現されれば、大阪万博の「月の石」以上の人気を集めることになりそうである。

日本展示学会通信51号

発行日 平成16年4月21日
編集・発行人 日本展示学会
発行責任者 高橋信裕
発行所 日本展示学会事務局